<コーヒー由来化合物であるカフェ酸による重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染の阻害>
・Ogawa M, Shirasago Y, Ando S, Shimojima M, Saijo M, Fukasawa M.
“Caffeic acid, a coffee-related organic acid, inhibits infection by severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in vitro.”
J. Infect. Chemother.2018; 24: 597-601.
doi: 10.1016/j.jiac.2018.03.005.
doi: 10.1016/j.jiac.2018.11.009.(Corrigendum)
重症熱性血小板減少症候群は、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)を持つダニに咬まれることで主に発症し、発熱や血小板減少等が特徴であり、致死率も約30%ときわめて高く、対策が求められる感染症です。しかしながら、今のところ、認可された治療薬やワクチンはありません。
我々は、天然物化合物、特に食品由来化合物の抗ウイルス活性について興味を持ち検討をしていく中で、コーヒー抽出物がC型肝炎ウイルス(HCV)感染を阻害すること、コーヒー抽出物の主要成分であるカフェ酸がHCV感染を強く阻害することがわかり、報告してきました(Jpn. J. Infect. Dis. 2015)。HCV以外のウイルスについても検討していく中で、今回、SFTSVの培養細胞における感染が、カフェ酸で阻害されることがわかりました。
カフェ酸のSFTSV感染阻害過程を詳細に検討した結果、カフェ酸は侵入過程を強く阻害していることがわかりました。さらに、カフェ酸は、侵入過程の中でも、ウイルス粒子自体に作用し、その結果、宿主細胞表面に結合できるウイルス粒子の量が低下することで、感染が阻害されていることがわかりました。また、カフェ酸は、感染細胞から非感染細胞への感染の広がりを阻害できることもわかりました。
カフェ酸のように、食品由来成分で安価にSFTSV感染を防げる化合物が見つかれば、非常に有用であると考えられ、類縁体解析等を含め、さらに検討を続けています。
本研究は、国立感染症研究所細胞化学部・ウイルス第一部の共同研究の成果です。研究費は、文部科学省科研費、日本医療研究開発機構(AMED)等の支援を受けて行われました。本成果は、発表雑誌の“Issue Highlights”の一つに選ばれました。