国立感染症研究所 概要

国立感染症研究所 概要

国立感染症研究所パンフレット(PDF)(令和5年3月発行)

Ⅰ.沿革

終戦直後、我が国の衛生状態は極度に悪化し、結核、腸チフス、赤痢、ジフテリア、日本脳炎、寄生虫病等多数の感染症がまん延していた。又、外地から本来我が国にはない感染症も多く持ち込まれ、感染症対策は新しい日本の安全、安心な社会を作るため国の最重要課題となった。1947(昭和22)年、厚生省所管の(i)感染症に関わる基礎、応用研究と(ii)抗生物質やワクチン等の開発及び品質管理のために国家検定を行う厚生省附属試験研究機関として国立予防衛生研究所(予研)が設立された。これが国立感染症研究所の前身である。

研究所の起源は1892(明治25)年に設立された私立衛生会附属伝染病研究所(初代所長北里柴三郎)にさかのぼる。研究所はその後内務省所管の国立伝染病研究所となったあと、更に文部省に移管され、東京帝国大学附属伝染病研究所(伝研)となった(1916年 : 大正5年)。研究所は名称も所管も変遷をたどったが一貫して我が国の感染症研究の中心的役割を果たしてきた。

研究所の発足には、伝研所員たる教授、助教授の半数が予研所員として参加した。当初、庁舎は伝研庁舎内に設置され、3 部 (研究部、検定部、試験製造部)と庶務課で業務を開始した。1950年代に入り、厚生省組織規程のもと、その組織は細菌、ウイルス・リケッチア、結核、血清免疫、抗菌性物質等12研究部に拡大された。1955 (昭和30) 年には伝研から品川区上大崎の旧海軍大学校の跡地 (品川庁舎) に移転した。残った伝研もその後発展を重ね、1967 (昭和42) 年東京大学医科学研究所に改組された。

1958(昭和33)年に発生したポリオの大流行に対処するため、試験製造及び検定業務の施設が緊急に必要となり、1961(昭和36)年武蔵村山市にワクチン検定庁舎(村山分室)が新築された。さらに村山分室には、1963(昭和38)年にウイルス中央検査部が、また1965(昭和40)年に麻疹ウイルス部が新設された。さらに1981(昭和56)年に世界で5番目の施設として高度安全実験室(P4=BSL4)が完成したが、地元住民の要望等を踏まえP4レベルの実験稼働には至らなかった。

1978(昭和53)年には検定・研究に必要な品質の一定したサルの供給を目的として、茨城県つくば市に筑波医学実験用霊長類センターが支所として設置された。

国立予防衛生研究所のあり方に対する答申(1984(昭和59)年、8.25)等に基づき、研究部門と品質管理部門の分離等を考慮の上、組織の全面的見直しが行われ、1992(平成4)年秋には品川庁舎から現在の新宿区戸山(戸山研究庁舎)に移転した。一方、品質管理部門(ワクチン、血液製剤等)は村山分室に集約された。この間、1988(昭和63)年には新たな感染症としてのエイズ問題に対処するため、エイズ研究センターが新設された。

1997(平成9)年1月には国立多摩研究所が当研究所の支所となり、ハンセン病研究センターとして新たなスタートを切った。その年の4月には、研究所の設置目的をより鮮明にするため、その名称を国立感染症研究所に改名した。同時に、我が国の感染症の発生を一か所で把握し迅速な対策を可能とする目的で、感染症疫学部が感染症情報センターに改組された。

2002(平成14)年4月には、厚生労働省が進める21世紀に向けた厚生科学研究の総合的推進に基づく試験研究機関の重点整備・再構築の一環として、研究体制を整備し、研究の促進、充実を図るために組織の改組が行われた。口腔科学部のう蝕室・歯周病室が国立保健医療科学院に集約され、食品衛生微生物部が国立医薬品食品衛生研究所に移管された。

2005(平成17)年4月には、遺伝子資源室・筑波医学実験用霊長類センター及び獣医科学部の一部が独立行政法人医薬基盤研究所へ移管された。10月には、病原体ゲノムに関する研究の拡充を図るために、遺伝子解析室が病原体ゲノム解析研究センターへと改組された。

2007(平成19)年4月には生物学的製剤及び抗菌性物質製剤の国家検定・検査における成績の総合評価ならびに検定・検査に必要な標準品の管理評価をするため、検定検査品質保証室が新たに発足した。

2009(平成21)年4月には、インフルエンザウイルスに関する研究の拡大、発展を図るため、インフルエンザウイルス研究センターが発足した。それに伴いウイルス第3部が改組され、インフルエンザ以外の呼吸器ウイルス感染症を扱う。またハンセン病研究センターにおいては基礎研究から応用研究へ一体化した効率のよい研究体制を敷くべく病原微生物部と生体防御部が発展、統合し、感染制御部となった。

2013(平成25)年4月には、真菌研究の重点化を図るため生物活性物質部を真菌部に改名した。また、疫学機能を強化していくために感染症情報センターを感染症疫学センターと改名した。

2014(平成26)年4月には、製造・試験記録等要約書の審査を新たに国家検定に取り入れたこと、及び生物学的製剤の品質保証面におけるWHO等への国際協力機能などを強化するため、検定検査品質保証室と放射能管理室の2つの室からなる品質保証・管理部が設置された。

2015(平成27)年8月には、村山庁舎のBSL4実験施設が国内で初めて法律に基づき特定一種病原体等所持施設として厚生労働大臣の指定がされた。

2017(平成29)年4月には、院内感染症対策サーベイランス事業(JANIS)の強化とともに薬剤耐性に関する包括的なシンクタンク機能を担う組織として薬剤耐性研究センターが新設された。それに伴い細菌第二部が改組され、同部では日和見感染症及び薬剤耐性菌研究・抗生物質品質管理機能を同センターに移し、呼吸器系細菌感染症、毒素産生細菌感染症を扱うこととなった。

2018年(平成30)年4月には、薬剤耐性研究センターに従来の七室に、第八室が追加された。

2019(令和元)年7月には、法律に基づき特定一種病原体等を外国から輸入することについて厚生労働大臣から指定を受け、9月にそれらの病原体等を輸入し所持した。

2020(令和2)年4月には、バイオセーフティ管理室と動物管理室が、安全実験管理部として統合された。

また、感染症疫学センターの危機対応関連部門、病原診断部門、講習部門を分離し、新たに感染症の危機管理部門を担う組織として感染症危機管理研究センターが設置された。

品質保証・管理部に従来の二室に、情報管理部門の第三室が追加された。

2021(令和3)年4月には、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を踏まえ、危機管理体制を強化のため以下のような組織再編があった。

インフルエンザを含む急性呼吸器ウイルス感染症研究の強化と重点化を図るため、インフルエンザ研究センターがインフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターに改組された。

また、予防薬及び治療薬に関する研究を強化していくため、免疫部を治療薬・ワクチン開発研究センターに改名した。

ウイルス第三部に従来の三室に加え、従来の四室の機能の一部が、インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターに移され、新たにワクチン国家検定強化等のため新たな第四室と第五室が追加された。

安全実験管理部は従来の二室を戸山庁舎と村山庁舎に分割して四室とし、病原体バンクを担う第五室から第七室が追加された。

研究企画の機能を強化するため、企画調整主幹から研究企画調整センターを新設し、センター内に二室が設置された。

感染症疫学センターは従来の六室に、第七室から第十四室が追加された。

感染症危機管理センターは従来の五室に、第六室から第八室が追加された。

自治体や国と連携しての実地疫学調査を強化し、研究ならびに講習を行うことをつかさどる実地疫学研究センターが新設された。

2022(令和4)年4月には、血液・安全性研究部が次世代生物学的製剤研究センターに名称変更し、従来の四室に加え新たに第五室が設置された。

また、獣医科学部に従来の3室に加え新たに第四室が設置された。

病原体ゲノム解析研究センターにおいて、従来の三室に加え新たに第四室が設置された。

Ⅱ.業務の概要

当研究所における業務の目的は、感染症を制圧し、国民の保健医療の向上を図る予防医学の立場から、広く感染症に関する研究を先導的・独創的かつ総合的に行い、国の保健医療行政の科学的根拠を明らかにし、また、これを支援することにある。この機能を整理すると、① 研究業務、② 感染症のレファレンス業務、③ 感染症のサーベイランス業務、 ④ 国家検定・検査業務、⑤ 国際協力関係業務、 ⑥ 研修業務、⑦アウトリーチ活動等の業務に整理される。

(1)感染症に関わる基礎・応用研究

感染症に関する基礎・応用研究を行っている。特に新興・再興感染症として位置づけられている疾患及び
旧来より存在する重要疾患の病原体の分子生物学解析に加え、それらの迅速診断法及びワクチン等の開発・応用研究の応用を主たる課題としている。遺伝子組換えワクチンの開発研究や、新しい発想のワクチン開発(粘膜ワクチン、DNA ワクチン等) 研究にも積極的取り組みがなされている。また、近年感染症をとりまく環境も大きく変化している。国際交通網の発展に伴う
訪日外国人の増加、気候変動および地球温暖化の影響、人獣共通感染症や薬剤耐性菌感染症の増加などがあげられる。このため、感染症研究所が取り組むべき課題はさらに広範囲となっている。

(2)感染症のレファレンス業務

国立感染症研究所のレファレンス業務は、感染症に関する検査実施、ならびに正確な病原体検査に必要なすべての活動である。具体的には、病原体等 (病原微生物及びそれらの産物、寄生動物、媒介動物) の保管、分与、感染症の診断・検査や疫学調査等に用いる試薬の標準化及び標準品の製造・分与、専門技術者の教育、検査精度の評価、情報交換等である。感染症レファレンス活動を円滑に運営するためにレファレンス委員会が設置され、地方衛生研究所等と連携して感染症の制圧を目的とした活動を行っている。

(3)感染症のサーベイランス業務と感染症情報の収集・解析・還元と提供

我が国のサーベイランス事業の一環として、全国の地方衛生研究所からの病原体検出報告及び感染症法に基づく定点診療所等からの患者発生状況を当研究所で集計評価し、その結果を週報 (IDWR) 及び月報 (IASR) として国民に提供している。更に感染症の流行や集団発生時においては、その疫学調査、並びに外国の感染症情報機関と情報の交換を行う。実地疫学専門家養成コース (FETP-J) を開催し、全国に修了者の輪を広げることにより、効果的な疫学調査ができるようになることを意図している。これらの業務をより有効に推進する中核的組織として、1997 (平成 9 ) 年 4 月には感染症情報センターが設置され、疫学機能の強化のため2013 (平成25) 年 4 月に感染症疫学センターと改名した。

(4)国家検定・検査業務と生物学的製剤、 抗生物質等の品質管理に関する研究

(1) 感染症、その他特定疾病の予防・治療及び診断に関する生物学的製剤 (各種ワクチン、血液製剤) について、それらの有効性と安全性及び均質性を保証するため国家検定を行っている。2012 (平成24) 年10月から製造・試験記録等要約書の審査を新たに国家検定に取り入れた。
(2) 行政上必要な検査をはじめ、一般の依頼による生物学的製剤、抗生物質医薬品並びに各種ウイルス、血清、抗体等の生物学的検査を行っている。
(3) 国家検定及び検査に必要な生物学的製剤や抗生物質医薬品の各種標準品 (診断用血清類、診断用抗原、標準ストレプトマイシン等) の整備、またこれらのうち、製造が技術上困難なものの製造を行っている。また、研究の進展により大量生産への移行が前提となるより有効な予防薬、診断用抗原及び抗血清等の試験製造も行っている。

(5)国際協力関係業務

公衆衛生上大きな脅威である新興・再興感染症への対応のため、世界規模での情報提供、研究・技術面での国際貢献、WHO や国内外の研究機関等との連携調整を行っている。2003年以降、台湾、中国、韓国、インドネシア、ベトナム、インド、モンゴル、タイ等の感染症研究機関との研究協力に関する覚書を締結するとともに、「日中韓感染症シンポジウム」などの開催、共同研究事業などを進めている。

(1) WHO 指定センター・WHO レファレンスラボラトリー
  • 日本脳炎世界特別専門ラボラトリー (ウイルス第一部)
  • エンテロウイルス協力センター (ウイルス第二部)
  • ポリオ世界特別専門ラボラトリー (ウイルス第二部)
  • ポリオ地域レファレンスラボラトリー(ウイルス第二部)
  • 麻疹・風疹世界特別専門ラボラトリー (ウイルス第三部)
  • WHO インフルエンザ協力センター (インフルエンザウイルス研究センター)
  • WHO 国内インフルエンザセンター (インフルエンザウイルス研究センター)
  • H5 レファレンス研究室 (インフルエンザウイルス研究センター)
  • 重要品質規制研究室 (インフルエンザウイルス研究センター)
  • 生物学的製剤の標準品、規格に関する協力センター (品質保証・管理部)
  • ヒトパピローマウイルス地域レファレンスラボラトリー (病原体ゲノム解析研究センター)
  • ハンセン病薬剤耐性拠点監視事業指定レファレンスラボラトリー (ハンセン病研究センター)

(6)研修業務

海外技術研修員に対してはエイズ、ポリオ及びハンセン病等に関する集団技術研修や、その他個別研修を実施している。また国内の研究機関、保健行政機関等の職員に対する研修事業も企画・実施している。

(7)アウトリーチ活動

戸山庁舎、村山庁舎でそれぞれ年に一度、国立感染症研究所の一般公開を行い、来場者に感染研の存在意義と感染症に対する理解を深めてもらい、かつ、研究者と来場者との交流の促進を図っている。

Ⅲ.施設

当研究所は、設立当初東京大学附属伝染病研究所(現東京大学医科学研究所)の庁舎で業務を行っていたが、昭和30年、品川区上大崎の海軍大学校跡に移転した。その後、武蔵村山市内に昭和36年ポリオワクチン検定庁舎延1,483m2を新築、同40年麻疹ウィルス部庁舎延1,107m2、同51年風疹ワクチン検定庁舎延280m2、同55年高度安全実験室延1,049m2が増築された。さらに、つくば市に昭和53年から支所として筑波医学実験用霊長類センターが敷地91,599m2に建物延10,083 m2の規模で建設された。

平成4年10月、研究部門を新宿区戸山の敷地19,112m2に建設した建物延31,698m2(予研専用面積12,511m2)の国立健康・栄養研究所、国立医療・病院 管理研究所との合同の研究庁舎に、検定及びこれらに関する研究部門を武蔵村山市にある村山分室敷地19,808m2に建物延10,972m2の検定関係庁舎を建設して移転した。平成9年1月、ハンセン病及びその他の抗酸菌症の研究を行う場として東村山市にハンセン病研究センター(敷地面積:17,186.86m2、建物延べ4,630m2(研究庁舎3,763m2))を設置した。

平成17年4月に、筑波医学実験用霊長類センターが独立行政法人医薬基盤研究所へ移管された。

平成20年8月に、インフルエンザウイルスに関する研究を行うための9号棟(延 4,639 m2)、及び平成24年3月に10号棟(延912 m2)が新築された。

<参考>

平成24年4月現在、各庁舎の概要については、次のとおりである。

戸山庁舎(敷地面積18,123 m2、建物延面積31,740 m2
村山庁舎(敷地面積19,748 m2、建物延面積25,756 m2
ハンセン病研究センター(敷地面積17,211 m2、建物延面積4,755 m2

各部の研究業務と機能

総務部

研究所における総括的な業務を担当すると共に、研究推進のための支援部門として、試験研究業務が円滑に遂行出来るように、総務課、人事課、会計課、調整課、業務管理課及び施設管理課の6課を置き管理運営を行っている。

また、当所発行の Japanese Journal of Infectious Diseases の編集を行う他、感染症を中心としたウイルス学、細菌学、寄生虫学、病理学、免疫学、疫学等に関する蔵書を所蔵している図書室を設けている。

ウイルス第一部

出血熱ウイルスを含む高病原性ウイルス、アルボウイルス、神経ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、及びリケッチア・クラミジアについての基礎研究、これらの病原体に起因する感染症の実験室診断法の確立、疫学的研究、病態発現機構の研究、予防治療法の研究を行っている。ワクチン(天然痘、日本脳炎、狂犬病、水痘帯状疱疹)の検定や検査を、また、これらの標準品の作製と供給を行っている。第二室は WHOの日本脳炎レファレンスラボに指定されている。

第一室(外来性ウイルス室)

ウイルス性出血熱(エボラウイルス病、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等)及び天然痘の実験室診断法の開発及びウイルス学的研究

重症熱性血小板減少症候群に関する研究

重篤な新興、再興ウイルス感染症の実験室診断法及び予防法の開発

痘瘡ワクチンの品質管理に関する研究

第二室(節足動物媒介性ウイルス室)

アルボウイルス感染症、特に日本脳炎、ダニ媒介脳炎、デング熱、ジカウイルス病、チクングニア熱の診断法確立

アルボウイルスの分子疫学的研究

アルボウイルス感染により誘導される免疫応答に関する研究

日本脳炎ワクチンの品質管理に関する研究

黄熱ワクチンの品質管理に関する研究

アルボウイルスのレファレンス業務

第三室(神経系ウイルス室)

狂犬病ウイルスの病原性に関する研究

新規狂犬病ワクチンの開発及び現行ワクチンの品質管理に関する研究

進行性多巣性白質脳症の実験室診断に関する研究

神経親和性ブニヤウイルス感染症の実験室診断に関する研究

第四室(ヘルペスウイルス室)

ヒトヘルペスウイルス感染症の予防、治療、診断に関する研究

ヒトヘルペスウイルスの増殖、遺伝子発現、病原性に関する研究

ヒトヘルペスウイルスの分子及び血清疫学的研究

薬剤耐性ヘルペスウイルス感染症の診断・治療に関する研究

水痘帯状疱疹ウイルスワクチンと抗原の品質管理に関する研究

第五室(リケッチア・クラミジア室)

リケッチア及びクラミジア疾患の血清及び病原体診断法の確立

リケッチア及びクラミジアの分子及び血清疫学的研究

リケッチア及びクラミジア関連疾患の病態形成機序に関する研究

リケッチア及びクラミジアのレファレンス業務

ウイルス第二部

下痢症を起こすウイルス、ポリオウイルスを始めとするエンテロウイルス、経口感染及び血液を介して感染する肝炎ウイルスについての基礎研究及びウイルスに起因すると疑われる腫瘍性疾患についての病原や病因の検索等を行っている。これらのウイルスに起因する疾患のワクチン開発や改良、診断法の改善、開発も行っている。さらに、これらのウイルス感染症の疫学研究を行い、国内及びWHOのレファレンスラボラトリーとなっている。

第一室(下痢症感染ウイルス室)

  • 下痢症ウイルスの診断法、疫学解析手法の研究
  • 下痢症ウイルス感染症の予防と冶療に関する研究
  • 下痢症ウイルスの分子生物学的研究
  • ポリオワクチンの検定と品質管理に関する研究
  • ロタウイルスワクチンの検定と新規ワクチン開発に関する研究

第二室(エンテロウイルス室)

  • 世界ポリオ根絶のためのポリオウイルス実験室診断及び分子疫学的解析
  • ワクチン由来ポリオウイルスのウイルス学的及び疫字的解析
  • エンテロウイルス感染症の実験室診断とレファレンス活動
  • ポリオウイルス及びエンテロウイルスの病原性についての分子ウイルス学的研究

第三室(腫瘍ウイルス室)

  • B型、C型肝炎ウイルスによる肝発癌機構の研究
  • B型、C型肝炎ウイルス検体パネルの整備
  • 腫瘍ウイルスによる発癌機構の研究

第四室(血液伝播性肝炎ウイルス室)

  • B型、C型肝炎ウイルスの分子生物学的研究
  • 血液を介して感染する肝炎の流行動向及び予防、診断、治療方法の研究
  • 新しい肝炎ウイルスの検索
  • 肝炎ウイルス検査陽性者の受診受療を促す陽性者フォローアップ事業

第五室(経口感染性肝炎ウイルス室)

  • 経口感染する肝炎ウイルス感染症の病原及び病因の検索
  • 経口的に感染する肝炎の流行動向及び予防、診断、治療方法の研究
  • A型、B型肝炎ワクチンの検定と品質管理に関する研究

ウイルス第三部

麻しんウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルスに起因する感染症の実験室診断法、疫学、病原性発現機構、予防法などに関する研究を行っている。また、上記感染症に加えて、インフルエンザウイルス、呼吸器系ウイルス(コロナウイルス[SARS-CoV-2])に対するワクチンの国家検定や検査、標準品・参照品の作成や供給などを行っている。世界保健機関(WHO)より世界麻しん風しん特別実験室(Global Specialized Laboratory[GSL]for Measles and Rubella)の指定を受け、国内のみならず世界の麻しん風しん対策に協力している。世界の関係機関と連携して、インフルエンザワクチンの品質管理に使用する国際標準品の制定等に協力している。

第一室(麻しんウイルス研究室)

麻しんワクチン及び麻しん風しん混合ワクチンの国家検定、ならびにそれらの品質管理に関する研究を行っている。また、麻疹の実験室診断法の開発、診断用標準品の整備・配布、流行ウイルス株の解析などを行っている。麻疹ウイルスの病原性や麻しんワクチンの性状に関する基礎研究を行っている。第二室と共に、WHOのGSLとして新しい技術の開発や検査技術研修などの国際協力を行っている。

第二室(風しんウイルス研究室)

風しんワクチンの国家検定、ならびにそれらの品質管理に関する研究を行っている。また、風しんに関する体外診断用医薬品の承認前試験の実施と、それに使用する抗体パネルなどの参照品の作成や整備を行っている。風しんの実験室診断法の開発や、流行ウイルス株の解析、ならびに風しんウイルスの病原性や風しんワクチンの性状に関する基礎研究を行っている。第一室と共にGSLとしての国際協力を行っている。

第三室(ムンプスウイルス研究室)

おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンの国家検定、ならびにそれらの品質管理に関する研究を行っている。また、新規ムンプスワクチンや抗ムンプス薬の開発に関する研究、国内流行ウイルス株の解析、ムンプスウイルスの増殖機構や病原性発現機構に関する基礎研究を行っている。

第四室(インフルエンザワクチン研究室)

インフルエンザワクチンの国家検定、ワクチンの品質管理に関する研究ならびにインフルエンザに関する基礎研究を行っている。また、世界の関係機関と連携して、インフルエンザパンデミックへの危機対応ならびにインフルエンザワクチンの力価試験に使用する国際標準試薬の制定に協力している。

第五室(呼吸器系ウイルスワクチン研究室)

呼吸器系ウイルス(コロナウイルスなどの)ワクチンの国家検定、ならびにそれらの品質管理に関する研究を行っている。また、呼吸器系ウイルス(インフルエンザウイルスを除く)に関しての基礎研究を行っている。

細菌第一部

細菌第一部においては、以下に挙げるような細菌の分類及び同定に関する研究、迅速診断法及び分子疫学的手法の開発研究、ならびにそれらを用いての細菌感染症の流行解析を行っている。また、分子遺伝学的及び細胞生物学的手法を用い、細菌感染症の病原性の分子レベルの研究を行い、その成果を病原体診断・検査、治療、及び予防法の開発に応用させている。

第一室(腸管系細菌 I 室)

腸管病原性細菌(腸管出血性大腸菌、カンピロバクター等)の分子遺伝学的研究

分子疫学的手法による集団感染調査法の開発

腸管病原性細菌と宿主細胞との相互作用の分子レベルの解析

第二室(腸管系細菌 II 室)

ビブリオ科の分類学的研究、同定、血清型別及び病原性の研究

赤痢菌の血清型別及び病原性の研究

チフス菌及びパラチフス A 菌のファージ型別、薬剤感受性試験及び病原性の研究

第三室(新興細菌感染室)

レジオネラの分子疫学と病原性の研究

侵襲性肺炎球菌感染症の疫学及び薬剤耐性の研究

肺炎球菌が保有する病原因子の機能解析と、菌と宿主との相互作用に関する研究

劇症型レンサ球菌感染症のサーベイランス及び病原性の研究

第四室(全身性感染細菌室)

ライム病、レプトスピラ感染症、ペストの診断・予防法の開発

ボレリア、レプトスピラの病原性の研究

第五室(泌尿生殖器系細菌室)

梅毒の体外診断薬の開発及び品質管理

泌尿生殖器系細菌の病原性及び薬剤耐性の分子機作及び鑑別についての研究

髄膜炎菌の疫学、薬剤耐性及び病原性の研究

第六室(口腔細菌感染症室)

口腔細菌感染症の診断、予防方法の開発

口腔細菌の病原性機構の研究

細菌膜小胞の生物学とその医療応用に関する研究

細菌第二部

細菌第二部は、ジフテリア、百日咳、結核、インフルエンザ菌感染症、マイコプラズマ感染症などの細菌性呼吸器感染症、破傷風、ボツリヌス症、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症などの偏性嫌気性細菌感染症、ヘリコバクター属菌等による日和見感染症や慢性感染症、鼻疽、類鼻疽などの希少感染症、猫ひっかき病など一部の人獣共通感染症について予防・診断・治療及びそれらに関するレファレンス業務にかかわることを所管する。これらの感染症の原因となる細菌について病原性、薬剤耐性の分子機構の解明や分子疫学解析、新規の薬剤やワクチン、診断法開発を行っている。また、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日せきワクチン、BCGワクチン、Hibワクチン、精製ツベルクリン、ボツリヌスウマ抗毒素など一部の抗毒素などの生物学的製剤の品質管理試験及びそれらの品質管理に必要な標準品に関すること、無菌性保証に関すること、ならびにそれらのレファレンス業務を行っている。これらの感染症の研究やワクチン等生物学的 製剤の品質管理に関して国際協力も行っている。

第一室(百日咳室)

百日咳菌を含むボルデテラ属細菌及びそれらに起因する疾病に関する研究を行うとともに、百日せきワクチンの検定・審査を担当する。また、百日咳感染症の病原体サーベイランスならびにレファレンス業務を行っている。

第二室(マイコプラズマ・ヘモフィルス及び無菌性保証室)

マイコプラズマ、インフルエンザ菌などの細菌及び その感染症に関して、病原因子の解析、検査法の確立、 分子疫学的解析などの研究を行っている。また、ヘモ フィルス・インフルエンザ b 型(Hib)ワクチンの品質 管理を担当するとともに、生物学的製剤の無菌試験に 関する業務に対応している。

第三室(細菌毒素・トキソイド室)

ボツリヌス菌、破傷風菌、クロストリディオイデス・ディフィシル等の偏性嫌気性細菌による感染症、ならびにジフテリア菌をはじめとするコリネバクテリウム属菌による感染症に関する研究、及び行政検査を行っている。また、それらの感染症の予防、治療などに不可欠な、トキソイドワクチン、抗毒素製剤などの品質管理及びその技術向上に関する研究を行っている。

第四室(BCG・ツベルクリン室)

結核菌及び非結核性抗酸菌の病原因子を生物学的生化学的ならびに免疫学的手法を用いて解析する。結核症及び非結核性抗酸菌症の予防、診断、治療に関する研究を行っている。BCG製剤及び精製ツベルクリン製剤の品質管理を担当するとともにそれらの技術向上に関する研究を行っている。

寄生動物部

寄生動物部は原虫、蠕虫などの寄生虫に起因する感染症における病原機構、ならびに感染防御に関する基盤的研究を行っている。また、これら寄生虫症の疫学、サーベイランス、診断、予防、治療に関する応用的研究を行っている。同時に、臨床からの検査依頼や診断・治療に関する相談に応じている。寄生虫症の消長は食生活の変化、地球温暖化、薬剤耐性出現等の社会、自然要因に大きく影響されており、常に新興再興感染症の隆盛を注視している。このため国内外の研究所・大学との研究協力や相互交流を積極的に行っている。

第一室(原虫室)

赤痢アメーバ、ジアルジア、クリプトスポリジウムなどの水や食物を介して感染する腸管原虫による感染症の病原機構に係る研究を行っている。また、角膜炎・ 脳炎・肺炎の原因となる自由生活性アメーバや、胎児や免疫不全者に網脈絡膜炎や脳炎を引きおこすトキソプラズマの病原機構に関する基礎研究を行っている。また、同時にこれらの原虫感染症の疫学、分子疫学的調査、ならびに診断・治療法の開発を行っている。

第二室(蠕虫室)

食品由来、ならびに動物由来の寄生蠕虫症(アニサキス症、肺吸虫症、横川吸虫症・異形吸虫症、裂頭条虫症、エキノコックス症、アライグマ回虫症、トキソカラ症など) に関し、遺伝子診断法や血清診断法開発のための基礎的研究や疫学的研究を展開している。得られた成果は寄生虫情報として発信するとともに、医療機関や行政機関からの要請に応じて検査診断をサポートするなど社会貢献を果たしている。

第三室(外来寄生動物室)

マラリアやシャーガス病など、海外からの流入が問題とされる寄生虫症の病原・免疫機構に関する基礎的研究や診断・対策に関わる応用研究、寄生原虫の薬剤耐性に関する研究を実施している。また、これらの寄生虫症の診断や治療に関する相談にあたるとともに、熱帯地域を中心として問題となっている外来寄生虫症防疫のため、国内連携の強化(空港検疫所、地衛研など)と、国際連携の強化(アジア流行地、欧米諸国など)を積極的に行っている。

感染病理部

感染病理部は、寄生虫、細菌、ウイルス、プリオン等による感染症の発症病理及び宿主応答に関する研究を行っている。感染症の病態解明はおもに宿主側から解析し、その結果が診断や治療に役立つものをめざしている。国内外から集められたヒト感染症例の生検・手術・剖検材料、そしてマウスやサルを用いた実験感染材料での発症病理の解析を病理組織学、免疫組織化学、in situ hybridization、超微形態、分子生物学的方法を用いて総合的に解析している。また宿主の感染免疫応答、ワクチンの安全性と効果、宿主及び微生物遺伝子の機能解析、そして新しいワクチン開発を行っている。生ワクチンの神経毒力試験や新興再興感染症の病理検査、たとえばウシ海綿状脳症の免疫組織化学による確認検査も行っている。

第一室(診断病理室)

感染症その他の特定疾病に関する感染病理学的診断研究とこれらに関するレファレンス業務を行っている。

第二室(感染病理室)

感染症その他の特定疾病に関する動物モデルを用いた感染病理学的研究とこれらに関するレファレンス業務を行っている。生ワクチンの神経毒力試験を行っている。

第三室(実験病理室)

病因あるいは予防治療法が明らかでない疾病ならびに病原体が関与する悪性腫瘍に関する実験病理学的研究とこれらに関するレファレンス業務を行っている。

第四室(分子病理室)

感染症その他の特定疾病の診断、治療、予防に関する分子病理学的研究とこれらに関するレファレンス業務を行っている。

真菌部

真菌部は、真菌感染症に関する調査研究とレファレンス業務、行政検査、ならびに、抗菌薬の品質管理業務を担当している。真菌症検査や疫学調査と共に、真菌感染症の病態解明と制御法の開発を目指し、新たな診断治療標的の探索、ワクチンを含めた感染症制御薬、抗真菌薬耐性機構の解明、宿主制御因子に関する基盤応用研究を行っている。

第一室

  • カンジダ症、ならびに高病原真菌による真菌症に関する調査研究
  • 診断・検査技術の開発に関する研究、支援、行政検査
  • 真菌の病原性解明、ならびに治療応用に関する研究
  • 抗真菌薬の作用機序と耐性に関する研究
  • 国際的な研修や研究支援

第二室

  • アスペルギルス症、ムーコル症に関する調査研究
  • 抗真菌薬の活性や薬物相互作用の基盤応用研究
  • 糸状菌の増殖・宿主相互作用に関する基盤研究

第三室

  • クリプトコックス症、皮膚真菌症に関する調査研究
  • 真菌感染の生体防御機構の解明と予防・治療への応用研究
  • 感染免疫応答の誘導及び制御機構に関する基盤研究

第四室

  • 希少真菌症、ならびに抗感染症薬の調査研究
  • バイオインフォマティクスを応用した薬剤耐性機構の研究
  • 放線菌等の二次代謝産物生産微生物のゲノム解明と感染症制御薬への応用研究
  • 抗菌薬の収去検査

細胞化学部

感染宿主細胞の研究を主に生化学、体細胞遺伝学、細胞生物学の手法を用いて行い、感染症の予防・診断・治療に資する科学的知見を生み出している。また、蛋白質性感染病原体プリオンについては、研究に加えて牛海綿状脳症(BSE)行政検査を担当し、食の安全に貢献している。

第一室(生体高分子化学室)

病原性プリオンの生化学的及び細胞生物学的研究

ウシ海綿状脳症の生化学的確認検査

第二室(生体膜解析室)

遺伝学的手法を用いた感染症に関わる生体膜の代謝と輸送の研究

第三室(細胞機能室)

微生物感染における宿主細胞機能に関する生化学的、分子生物学的及び細胞生物学的研究

第四室(細胞病態化学室)

感染細胞の病態及び応答に関わる宿主細胞要因の研究

昆虫医科学部

疾病媒介や人体に対して有害な害虫類(昆虫類、ダニ類等)の分類、生態、生理機能、病原体の伝播機構、防除等に関する基礎的研究、調査研究、これらの害虫類に対する殺虫剤の効力検査等の業務を行っている。

第一室(分類・生態室)

疾病に関連する衛生害虫の分類学、生態学、蚊媒介性疾患を中心とした疫学に関する研究ならびに野外調査を行っている。衛生昆虫類の国際データベース・ネットワークに関して、我国におけるセンター的役割を果たしており、分類・同定検査の依頼にも対応している。

第二室(生理機能室)

衛生害虫によるウイルス・原虫・細菌等病原体の伝播機構に関する生理・生化学的研究を行っている。また、衛生害虫の保有する病原体の分離・同定・性状解析に関する情報提供も行っている。

第三室(殺虫剤・殺そ剤室)

衛生害虫の総合的防除法や殺虫剤抵抗性機構に関する研究を行っている。さらに、衛生昆虫類の系統維持とその分与、ならびに殺虫剤等の効力検査を担当している。

獣医科学部

獣医科学部では動物由来感染症のリスク評価、動物由来感染症に関する診断法、予防法に関する研究ならびにこれらの感染症の発症機構及び病原体に関する研究を国内外の関係機関と連携して行っている。

第一室(感染源動物対策室)

動物由来感染症の感染源となる動物における疫学的、病理学的研究を行っている。また、病原性発現機序の解明に係る研究を行っている。主に、ブルセラ症、カプノサイトファーガ感染症、鼠咬症、SFTS、Bウイルス感染症などを研究対象としている。

第二室(感染制御研究室)

動物由来感染症における動物間及び動物から人への病原体の感染経路と病態発現機序について、分子生物学的、疫学的に明らかにする。主に、狂犬病(全てのリッサウイルス感染症を含む)、ヘンドラウイルス・ニパウイルス感染症、炭疽などを研究対象としている。

第三室(動物由来稀少感染症室)

国内で稀少となった、あるいは国内に存在しないが海外から持ち込まれる可能性のある動物由来感染症について、その診断法の確立、予防法に関する研究を行う。主に、野兎病、コロナウイルス感染症、E型肝炎、オルソポックスウイルス感染症(Mpoxを含む)などを研究対象としている。

第四室(One Health アプローチ室)

人、動物、そして環境が関与する動物由来感染症について、疫学調査を実施し、その総合的な対策に関する研究を行う。主に、マダニ媒介感染症、蚊媒介感染症などを研究対象としている。

品質保証・管理部

放射線管理、国家検定・検査の信頼性保証及び所内情報システムの管理に関する業務を行っている。

第一室(放射能管理室)

放射性同位元素等規制法に基づき放射性物質の取扱い及び機器の管理を行っている。また、放射性物質の生物学的利用について多面的に指導、連絡及び調整を行っている。さらに、それらを利用した分子生物学、生化学、生理学や遺伝学を含む基礎生物学と医学への応用研究を進めている。

第二室(品質保証室)

生物学的製剤の検定・検査の信頼性を確保するために、試験の実施において遵守すべき基準及び規定の整備、試験の実施に必要な標準品の管理、及び試験の精度及び妥当性の評価を行っている。また、試験法の国際調和など、生物学的製剤の品質保証に関して、国際的な調整ならびにそれらに関わる研究を行っている。

第三室(情報管理室)

国立感染症研究所の研究者に情報通信回線網を提供する所内LANシステムの構築・運用・管理と、所内情報システムの管理体制の整備、及びそれらのサイバーセキュリティ教育・管理・規程の整備等を行っている。事案が生じた際には、サイバーセキュリティ事案対応チーム(CSIRT)の事務局となり、一次対応と事後対策を行う。また、電算機を活用した病原体の分子生物学・構造生物学的な解析と医学・疫学への応用研究を進めている。

安全実験管理部

安全実験管理部は、研究支援部門として(1)封じ込め(BSL-3)実験室と高度封じ込め(BSL-4)施設の管理運営ならびにバイオリスク管理に関する業務、(2)動物 実験施設の管理ならびに実験動物の健康管理に関する業務、(3)感染研の保有する病原体を基盤とする病原体バンク整備に関する業務を行っている。また、これら業務に関連する研究を行っている。

第一室(バイオセーフティ管理室)

生物災害に係る安全管理に関する調査、研究及び講習を担っている。

  • 病原微生物等を取り扱う職員等の安全確保を担保するために必要な安全管理
  • バイオセーフティ技術に関する教育と訓練ならびに研究
  • 生物災害の発生に関する情報の収集等と提供
  • バイオリスク管理委員会事務

第二室(動物管理室)

医学用実験動物の飼育及び健康管理ならびにこれらに関する科学的調査、研究及び講習を担っている。

  • 戸山庁舎の動物実験施設の管理及び運営
  • 実験動物の品質及び健康管理に関する検査ならびにこれらに関する研究
  • 動物モデルを用いた感染症の研究
  • 実験用マウスの系統維持に関する支援
  • 動物実験委員会事務

第三室(村山バイオセキュリティ管理室)

BSL-4 施設のセキュリティに関することを担っている。

  • 村山庁舎のBSL-3、BSL-4施設の管理及び運営
  • バイオセーフティ技術に関する教育と訓練ならびに研究
  • 実験施設バイオセキュリティに関する業務

第四室(村山動物実験室)

村山庁舎における動物実験室の管理に関することを担っている。

  • 村山庁舎の動物実験施設の管理及び運営
  • 実験動物の品質及び健康管理に関する検査ならびにこれらに関する研究
  • 実験動物を用いた検定・検査、研究への支援

第五室(ウイルスバンク室)

研究用ウイルスの収集及び整備に関することを担っている。

  • 研究用ウイルスの収集及び整備ならびに管理
  • 研究用ウイルスを用いた研究

第六室(細菌バンク室)

研究用細菌の収集及び整備に関することを担っている。

  • 研究用細菌の収集及び整備ならびに管理
  • 研究用細菌を用いた研究

第七室(バンク管理室)

研究用ウイルス及び研究用細菌の管理に関することを担っている。

  • 研究用ウイルスと研究用細菌の保存管理ならびに品質管理
  • ウイルスバンクと細菌バンクの維持に資する研究
  • ウイルスバンクと細菌バンクを活用した研究

国際協力室

国立感染症研究所が行う国際的な協力と調査及び研究の調整を行い、WHO や海外研究機関等との研究協力連携や開発途上国等に対する技術協力等についての調整を行っている。

研究企画調整センター

研究にかかわる事業の企画と実施についての総合的な調整を行っている。

特に、国立感染症研究所内の研究プロジェクトの企画と実施についての総合的な調整、関係行政機関との連絡・調整、他の研究機関との研究プロジェクトの調整を行っている。

第一室(研究企画室)

国立感染症研究所の所掌事務に係る調査及び研究に関する重要事項の総括及び知財戦略等の技術的指導に関することの調整を行っている。

第二室(研究調整室)

国立感染症研究所の所掌事務に係る調査及び研究に関する特定事項の総括及び所外組織の連携、共同研究の実施に関することの調整を行っている。

感染症疫学センター

平成11年4月に施行された感染症法では、サーベイランスシステムの強化が示されている。同法に基づいた基本指針の中には患者発生状況サーベイランスと同様に病原体に関する情報の収集、分析及び提供と公開も必要であるとされている。その中には国立感染症研究所に中央感染症情報センターを、地方感染症情報センターを各都道府県等域内に1ヵ所設置することが述べられている。

感染症情報センター(IDSC)は、平成 9 年度に感染症疫学部が発展解消され新たに国立感染症研究所内に設立された。その後、平成25年に感染症疫学センターに改称された。令和2年の組織再編により、感染症疫学センターは、センターの企画管理を担当する3つの室(企画管理グループ)、サーベイランスを担当する4つの室(サーベイランス グループ)、予防接種を担当する4つの室(予防接種グループ)、疫学研究を担当する3つの室(疫学研究グループ)からなる14室体制となった。

企画管理グループ

企画管理グループは、感染症疫学センターが行う業務、研究、研修の企画、調整に関すること、またサーベイランスに関する情報システムの開発とオープンデータ化、データシェアリングに関する業務と研究を行う。

企画管理室(第一室)

企画管理室では、感染症疫学センターが行う業務、研究、研修の企画、調整に関する業務、研究を行う。

システム開発室(第二室)

システム開発室では、サーベイランスを目的とする情報システムの開発と維持に関する業務、研究を行う。

オープンデータ推進室(第三室)

オープンデータ推進室では、サーベイランスで収集された情報の公開と二次利用(データシェアリング) の促進に関する業務、研究を行う。

サーベイランスグループ

サーベイランスグループは、国のサーベイランス事業の中で中央感染症情報センターとして位置づけられ、地方感染症情報センターならびに都道府県等の協力を得て、感染症法に規定された1-5類感染症を中心にしたサーベイランスを行っている。感染症サーベイランスに関連するものとして、感染症情報(患者情報、病原体情報、血清疫学情報)の収集と分析・提供、感染症対策に関する立案と技術支援、及びこれらをより有効に実施するための研究を行っている。これらの感染症情報及び研究内容等の交換は国内のみではなく、海外関係機関とも積極的に行っている。また新型コロナウイルス感染症の流行に対応するために、新規サーベイランスの構築と分析に関する業務と研究を行っている。

情報分析室(第四室)

情報分析室では、感染症発生動向調査、積極的疫学調査を含む国内の感染症疫学データの収集、解析及び評価ならびに海外の感染症情報機関との情報交換に関する業務、研究を行う。

情報還元室(第五室)

情報還元室では、感染症発生動向調査に関する情報還元を目的とした定期刊行物ならびにコンピューター通信を用いる感染症情報の提供に関する業務、研究を行う。

次世代情報室(第六室)

次世代情報室では、インターネット等を用いた国内外の感染症に関する情報の収集、解析及び評価ならびに新規サーベイランスの構築と分析に関する業務、研究を行う。

情報管理研修室(第七室)

情報管理研修室では、サーベイランスオフィサーの養成に関する業務、研究を行う。

予防接種グループ

予防接種グループは、感染症流行予測調査事業の一環として行われている血清疫学調査の立案と実施、現行予防接種の効果と副反応に関するモニタリング、これらの結果の公表と広く一般への情報提供、予防接種対象疾患の感染症として人に与える影響(disease burden)に関する調査研究、及び今後の我が国における予防接種の有用性に関する総合的研究を行っている。また国立感染症研究所として行われている国内血清銀行の管理を行っている。

予防接種政策室(第八室)

予防接種政策室では、予防接種の接種状況、有効性、費用対効果に関する調査及び研究ならびに予防接種の計画に関する業務、研究を行う。

予防接種評価室(第九室)

予防接種評価室では、予防接種の安全性及び副反応に関する業務、研究を行う。

予防接種普及室(第十室)

予防接種普及室では、予防接種の普及に関する業務、研究を行う。

血清疫学室(第十一室)

血清疫学室では、感染症流行予測調査と国内血清銀行の運営に関する業務、研究を行う。

疫学研究グループ

疫学研究グループは国立感染症研究所が行う感染症研究のデザイン、統計解析の支援、感染症数理モデルを用いた感染症の流行分析、対策戦略の設計を行っている。

疫学統計室(第十二室)

疫学統計室では、研究デザイン、統計コンサルテーション及びこれらに関する業務、研究を行う。

理論疫学室(第十三室)

理論疫学室では、感染症数理モデルを用いた感染症の流行分析、対策戦略の設計及びこれらに関する業務、研究を行う。

国際研究室(第十四室)

国際研究室では、海外フィールド研究の実施及びこれに関する業務、研究を行う。

エイズ研究センター

エイズ研究センターはHIV/AIDSに関する研究を強化することを主目的として1988年4月に設置された。同センターは2グループ3室から成り、HIVの属するレトロウイルスに起因する感染症を対象として、特にHIV感染症制圧に向けた研究を推進している。業務内容は、国内及びアジア・アフリカ地域のHIV感染動向把握・疫学的解析、HIV・HTLV臨床診断・検査技術の整備・向上及び国内薬剤耐性HIV変異モニタリングに加え、HIVとその関連ウイルスの増殖機序に関する研究、動物実験モデルの確立、感染免疫動態及び発症機構の解析等である。さらに、ワクチン開発ならびに新規治療法開発に向けた研究が進展中である。国内外の研究機関との連携を進めるとともに、HIV流行地域であるアジア・アフリカ等を対象とし、診断検査技術向上等を目的として、JICAの要請によるHIV及び関連感染症のコントロールに向けた診断検査・サーベイランス強化に関する国際研修を年一回開催している。

第一研究グループ(予防研究室)

HIV等の感染拡大阻止に結びつけることを目指して、感染免疫学的研究を進め、動物モデル及び臨床検体を用いた持続感染防御免疫機序に関する研究及び各種ワクチン開発研究を推進している。開発推進中のセンダイウイルスベクターを用いたワクチンは、国際共同臨床試験プロジェクトに発展している。

第二研究グループ(治療研究室)

HIV感染者のQOLの向上及び新規治療法開発を目指し、HIV及び関連感染症の発症機序に関する研究を推進している。

第一室(疫学研究室)

国内外のHIV(及びその他のレトロウイルス)感染拡大状況の把握を目的とし、感染動向の調査、各地域におけるウイルス多様性の解析(分子疫学的解析)、ウイルスゲノム進化に関する研究の推進を目指している。薬剤耐性HIV変異のモニタリング研究を進めている。

第二室(検査研究室)

HIV(及びその他のレトロウイルス)感染診断技術の評価試験を行うとともに、ウイルスの多様性に対応できる高度な診断技術確立に向けた基盤整備に取組み、診断検査技術の向上・精度管理に貢献している。

第三室(分子ウイルス学研究室)

分子生物学、ウイルス学、病理学的解析技術を駆使し、HIV(及びその他のレトロウイルス)のゲノム・蛋白の構造と機能に関する研究、及びウイルス複製・病態の機序と関連する宿主因子に関する研究を推進し、感染病態基盤の解明を介して、疾病制圧への貢献を目指している。

病原体ゲノム解析研究センター

感染症に関わる宿主遺伝子の探索と解析、病原性ウイルス及び細菌の遺伝子解析を行い、これらの遺伝子産物の構造と機能を研究する。

第一室(感染症関連遺伝子解析室)

感染症に関わる宿主遺伝子の探索と解析を行っている。また、ヒトパピローマウイルスの病原性に関する基礎研究や実験室診断、及びヒトパピローマウイルスに対する感染予防ワクチンの国家検定や開発研究を行っている。

第二室(病原性ウイルス遺伝子解析室)

ヒトに病原性を持つウイルスのゲノムと蛋白質の構造と機能に関する研究を行っている。病原性ウイルスゲノムの塩基配列と遺伝子産物の構造、機能に関する情報を集めたデータベースを構築し、情報提供する。

第三室(病原性細菌遺伝子解析室)

ヒトに病原性を持つ細菌のゲノムと蛋白質の構造と機能に関する研究を行っている。ゲノムの塩基配列と遺伝子産物の構造、機能、薬剤耐性、抗原性、病原性等に関する情報を集めたデータベースを構築し、情報提供する。

第四室(病原体ゲノムデータサイエンス室)

総合的な感染症対策支援のため、データサイエンス技術を用いた病原体ゲノム情報に関する研究を行っている。感染症に関わる病原体ゲノム情報にメタデータ(地理情報等)を統合して影響度を評価し、実地疫学や感染動態の把握に必要な情報を支援する。

インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター

インフルエンザを含む急性呼吸器感染症を引き起こすウイルスの性状解析や病態発現機構に関する基礎研究、予防治療法の研究ならびにサーベイランス、感染診断法の確立などを行っている。また、インフルエンザワクチン製造株の開発、細胞培養インフルエンザワクチンならびに経鼻ワクチンの実用化研究を行っている。さらに、WHOインフルエンザ協力センター、ナショナルインフルエンザセンター、H5レファレンス研究室、重要品質規制研究室としての指定をWHOより受けている。

第一室(インフルエンザウイルス株サーベイランス室)

ナショナルインフルエンザセンターとして季節性インフルエンザウイルスサーベイランス(抗原性解析及び遺伝子解析)及び抗ウイルス薬耐性株サーベイランスに関する研究、ワクチン候補株の検索を実施。WHOインフルエンザ協力センターとして諸外国の流行株の収集と解析、情報収集と発信などの国際協力を行っている。

第二室(急性呼吸器感染症ウイルス・サイトカイン研究室)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、中東呼吸器症候群(MERS)やRSウイルス感染症などの急性ウイルス性呼吸器感染症(インフルエンザを除く)の病因と診断・予防・治療に関する研究を行っている。またサイトカイン製剤の品質管理とそれに関連した研究を行っている。

第三室(インフルエンザワクチン株開発室)

鶏卵培養法による新型及び季節性インフルエンザワクチン製造株の開発に関する以下の研究を行っている。

  • 新型インフルエンザワクチン製造株の開発、その抗原性及び安全性評価。
  • プレパンデミックワクチン製造株の開発とその評価。
  • 季節性インフルエンザワクチン製造株の作製と性状解析。

第四室(細胞培養ワクチン開発室)

細胞培養インフルエンザワクチンの実用化に向けた以下の応用研究を行っている。

  • ワクチン製造用ウイルス株の開発、及びその評価。
  • 細胞培養ワクチンの抗原性、免疫原性の評価に関する研究。

第五室(経鼻粘膜ワクチン開発室)

経鼻粘膜インフルエンザワクチンの実用化に向けた安全性、有効性及び品質管理に関する基礎ならびに臨床研究を行っている。また動物実験を通してワクチンの有効性や安全性の評価系の構築も行っている。

薬剤耐性研究センター

2016年4月に国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議にて、我が国において薬剤耐性対策を推進するにあたって、今後5年間で実施すべき事項をまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定され、2017年4月に国立感染症研究所に薬剤耐性に関する包括的なシンクタンク機能を担う組織として薬剤耐性研究センターが設置された。

薬剤耐性研究センターでは国内外の実態調査や、耐性メカニズム研究、市場で流通している抗生物質の品質検査、薬剤耐性対策に資する新技術開発、病院の感染症対策支援、薬剤耐性に関してのシンクタンク機能が求められている。

薬剤耐性研究センターは八室からなり、各室の所管は以下の通りである。

第一室(抗生物質・分子疫学研究室)

薬剤耐性菌の薬剤耐性に関する研究、分子疫学調査、これらに関連するレファレンス業務を所管する。感染症発生動向調査(NESID)に基づきAMR感染症のリスクアセスメントを実施している。また、抗生物質ならびにその製剤の生物学的検査及びこれら医薬品の検査に必要な標準品の製造、必要な科学的調査・研究を所管している。

第二室(院内感染・統計研究室)

薬剤耐性菌に起因する感染症及び医療関連感染症の調査研究、これらの関連するレファレンス業務を行う。厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)事務局として院内感染の発生状況や薬剤耐性菌に関するデータの集計、解析、公開の実務を担当している。

第三室(ワンヘルス研究室)

薬剤耐性病原体の総合的な調査研究を所管する。医療分野のみならず、食品、環境など幅広い分野でワンヘルス(One health)アプローチを通して調査研究を行っている。

第四室(疫学研究室)

薬剤耐性菌による感染症の流行・集団発生時の疫学調査及び感染症流行の制御に関する研究を担当している。感染症発生動向調査(NESID)に基づきAMR感染症のリスクアセスメントを実施している。

第五室(グラム陽性菌研究室)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、その他薬剤耐性グラム陽性菌感染症の調査研究を行い、これに関わるレファレンス業務を担当している。

第六室(寄生虫・媒介動物研究室)

寄生虫、媒介動物に係る薬剤耐性研究を行っている。

第七室(ゲノム疫学研究室)

薬剤耐性菌のゲノム解析、薬剤耐性菌バンクの運営、及び薬剤耐性菌の分子疫学的調査研究ならびにこれに関連するレファレンス業務を担当している。

第八室(薬剤耐性真菌研究室)

真菌に起因する薬剤耐性感染症に係る調査研究を行っている。

感染症危機管理研究センター

令和元年度まで国立感染症研究所感染症疫学センターが担っていた業務には、疫学調査研究、ワクチンの効果及び副反応に関する調査研究、検査技術研修、ならびに感染症サーベイランスなどがあるが、東京オリンピック・パラリンピックや大阪・関西万博などによる感染症発生の危機の可能性を控え、感染症疫学センターの業務が多岐に亘っており、一つのセンターでは十分な役割を果たすことが困難となってきていた。

このような状況の中、感染症疫学センターの危機対応関連部門、病原診断部門、講習部門を分離し、新たに感染症の危機管理部門を担う組織として令和2年4月に感染症危機管理研究センターが設置された。また新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を踏まえ、令和3年4月に大幅に機能と人員を拡大し、危機対応演習・訓練の実施支援・プログラム開発、緊急時検査体制の構築・対応支援等の機能強化が行われた。

感染症危機管理研究センターは、次に掲げる業務を行っている。

  1. 感染症その他の特定疾病の危機管理に関し、情報の収集及び分析、訓練ならびに広報ならびにこれらに必要な科学的調査及び研究ならびにこれらに関する講習の実施。
  2. 感染症の判別のための検査ならびにこれらに必要な科学的調査及び研究(これらに関するレファレンス業務を含む。)ならびにこれらに関する講習の実施。

感染症危機管理研究センターは八室からなり、各室の所管は以下の通りである。

第一室(企画管理室)

研究、研修の企画及び調整ならびにセンター長を補佐し、センターの事務処理に関すること。

第二室(緊急時対応室)

感染症その他の特定疾病の危機管理に関する調査及び研究ならびに関係行政機関への連絡調整に関すること。

第三室(クライシスコミュニケーション室)

感染症その他の特定疾病の危機管理に関する情報の提供に関すること。

第四室(病原体診断室)

未同定の病原体材料の検査、他部の所管に属さない病原体のレファレンス業務及び病原体検出技術の開発研究に関すること。

第五室(演習・訓練企画支援室)

危機対応演習・訓練の実地支援、プログラムの開発に関すること。

第六室(細菌研修室)

細菌性疾患に関する検査情報の収集、解析及び提供ならびに検査技術の開発研究ならびに地方感染症情報センター及び地方衛生研究所における検査技術の向上及び標準化の支援に関すること。

第七室(ウイルス研修室)

ウイルス性疾患に関する検査情報の収集、解析及び提供ならびに検査技術の開発研究ならびに地方感染症情報センター及び地方衛生研究所における検査技術の向上及び標準化の支援に関すること。

第八室(危機対応検査準備室)

緊急時における検査体制の向上及び地方衛生研究所等への支援に関すること。

治療薬・ワクチン開発研究センター

治療薬・ワクチン開発研究センターは、感染症を病原体と宿主応答の両面から捉え、感染症の制圧に資する治療薬・ワクチンの開発研究を推進している。多種多様な病原体に対応すべく、所内病原体部門や国内外の大学、研究機関、企業と積極的に共同研究を進めており、様々な研究分野との融合を通じ、新しい研究手法を取り入れたシーズ開発や評価を行っている。加えて、感染症の免疫学的体外診断薬検査、へび抗毒素製剤の品質管理も行っている。

予防薬及び治療薬に関る研究(これらに関するレファレンス業務を含む。)及び講習を行うこと。

<ワクチン開発部門(第一室~第六室)>

第一室(液性免疫室)

ワクチンに関する液性免疫学的研究を行うことをつかさどる。

第二室(細胞性免疫室)

ワクチンに関する細胞性免疫学的研究を行うことをつかさどる。

第三室(自然免疫室)

ワクチンに関する自然免疫学的研究を行うことをつかさどる。

第四室(ワクチン評価室)

ワクチンの評価に関する研究を行うことをつかさどる。

第五室(アジュバント開発室)

アジュバントに関する研究を行うことをつかさどる。

第六室(ワクチン基盤開発室)

ワクチン開発の基盤に関する研究(他室の所掌に属するものを除く。)を行うことをつかさどる。

<治療薬開発部門(第七室~第十室)>

第七室(治療薬探索室)

治療薬の探索に関する研究を行うことをつかさどる。

第八室(治療薬評価室)

治療薬の評価に関する研究を行うことをつかさどる。

第九室(治療薬標的探索室)

治療標的の探索に関する研究を行うことをつかさどる。

第十室(治療薬基盤開発室)

治療薬開発の基盤に関する研究(他室の所掌に属するものを除く。)を行うことをつかさどる。

実地疫学研究センター

【業務の概要】

実地疫学センターは実地疫学の人材育成を基盤として、地方自治体や国内あるいは国際的な感染症等の健康危機事例を早期に探知し、迅速かつ適切にリスクを評価し、短期及び長期予防策の検討を行い、関係機関と連携しながら対応や対策に関する提言等の還元を行う体制を構築するものとする。実地疫学研究センターは、次に掲げる業務を行う。

  1. 保健行政機関の感染症等の健康危機管理を支援するために、実地疫学を実践する。
  2. 疫学の知識・手法を用いて、国内外の感染症等の健康危機に関する情報収集・分析・リスク評価(public health intelligence)、対応方法の検討を行う。
  3. 健康危機管理を担う人材を、実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program: FETP) において、以下の活動に関するon the job trainingを通じて、育成する。
    • 感染症アウトブレイク調査
    • 感染症サーベイランスの評価と改善、及び活用
    • 感染症等の健康危機管理事例のリスク評価
    • 疫学研究
    • 再発防止に寄与する情報還元
    • 国内外のFETPネットワークの構築と維持
  4. 感染症対策のための計画立案、情報還元・発信を行う。

【室の構成】

実地疫学研究センターは下記の三室で構成され、各室の所掌業務は以下の通りである。

第一室:実地疫学研修室

実地疫学研修の標準化・高度化、実施

第二室:実地疫学分析室

情報の分析とステークホルダー&市民向けの情報提供や効果的・迅速な対策、対応及び再発防止に寄与する情報に関する発信や還元

第三室:国際派遣室

各国プログラムとの連携、海外をフィールドとした活動(新興感染症、VPD 等)

次世代生物学的製剤研究センター

ヒトに使用される血液製剤、輸血に関連する体外診断用医薬品の品質管理(検定、検査)、及びワクチン、抗生物質製剤に関連する毒性試験、発熱試験、物理化学試験等の安全性に関する試験部門を担当する。また、これらに必要な標準品の製造、維持、評価、及びそれらに関わる基礎的研究、上記製剤の安全性に関する宿主免疫応答に関する研究を行っている。

第一室(血液製剤室)

血漿分画製剤(ヒト免疫グロブリン製剤等)の検定及び検査を行っている。また、血液製剤の品質管理に関する研究及び血液を介して感染するウイルス等の感染対策に関する研究を行っている。

第二室(輸血病態室)

特殊ヒト免疫グロブリン製剤(抗D、抗HBs)、凝固因子製剤、血液型判定用抗体等の検定、検査及び血液型判定検査キットの承認前検査を行っている。また、これらの業務に関連する標準品等の整備と輸血の安全性に関する基礎的及び応用研究を行っている。

第三室(物理化学室)

生物学的製剤の検定、検査及び承認前検査における物理化学試験及びHBs抗原検出キット、HCV関連抗体検出キットの承認前試験を行っている。また、製剤の性状分析及び作用機序に関する基礎研究を行っている。ウイルス感染の診断・治療法に関する研究、ワクチンに関する研究及び宿主免疫応答に関する研究を行っている。

第四室(安全性試験室)

血漿分画製剤(アルブミン製剤、ハプトグロビン製剤)の検定および検査を行っている。また、生物学的製剤の発熱試験を担当する。また、生物学的製剤の安全性向上に関する研究を行っている。

第五室(物質分析室)

新規モダリティ製剤の試験方法の開発と試験を行っている。また、生物学的製剤及び生体物質の質量分析、相互作用解析、構造解析を行っている。

ハンセン病研究センター

感染制御部

ハンセン病・結核・非結核性抗酸菌症の検査・診断・治療・予防・疫学・フィールドワークなどについて、 基礎から臨床に亘って国内外の研究者と連携し研究を推進している。さらに、ハンセン病の診断・治療効果判定などのための行政検査サービスも実施し、同時に抗酸菌感染症流行地であるアジア諸国の若手医師や研究者を対象とした研修等も行っている。感染制御部に は、以下の 8 室が設置されている。

第一室(分子細菌室)

抗酸菌の微生物学に関する調査研究;特に抗酸菌により発症する疾病の診断法及びワクチン開発の研究を行っている。

第二室(病態生理室)

抗酸菌の物質代謝・殺菌機構・治療薬開発・末梢神経障害誘導機構に関する調査研究;特に抗酸菌とマクロファージの相互作用の解析を行っている

第三室(分子薬理室)

抗酸菌の分子生物学的調査研究;特に抗酸菌の薬剤耐性機構の分子機構の解析と分子疫学的研究を行っている。

第四室(病態治療室)

抗酸菌に起因する疾病の病態解明及び予防・診断・治療方法に関する調査研究;特に抗酸菌感染症に関する微生物学的及び免疫学的研究を行っている。

第五室(発病予防室)

抗酸菌の生体内感染機構及び抗酸菌感染症の発症機構に関する調査研究;特に抗酸菌と宿主の相互作用に関する分子生物学的及び動物実験学的研究を行っている。

第六室(病態制御室)

抗酸菌の慢性持続感染に関する調査研究;特に抗酸菌の潜伏・再燃・慢性化機構に関する病原体因子と宿主因子の解析及び病変増悪因子の解析を行っている。

第七室(分子疫学室)

抗酸菌感染症の臨床細菌学的及び社会医学的要因に関する調査研究;特に抗酸菌感染症の疫学的調査研究を行っている。

第八室(感染診断室)

抗酸菌感染症の病理学的調査研究;特に抗酸菌に対する免疫応答機構の解明及び診断法と治療法に関する病理学的研究を行っている。