所長挨拶
国立感染症研究所 所長挨拶
国立感染症研究所(感染研)は、1947年に国立予防衛生研究所として設立されて以降、厚生省(厚生労働省)直属の研究機関として役目を果たしてきました。2025年4月より、感染研と病院機能を核とする国立国際医療研究センターとの統合により、新しく特殊法人国立健康危機管理研究機構(JIHS)が設立され、感染研はJIHSの一翼を担う研究機関として、新たにスタートすることとなりました。感染研の伝統を引き継ぎ、感染症対策に貢献すべく、従来の業務を継続し、さらに発展させていく所存です。
JIHSは、世界トップレベルの感染症対策を牽引する「感染症総合サイエンスセンター」として、主に4つの機能―[1] 感染症に関する情報収集・分析・リスク評価機能(Disease Intelligence)、[2] 研究・開発機能、[3] 臨床機能、[4] 人材育成・国際協力機能―を発揮することになります。感染研は、これらのうちDisease Intelligenceと研究・開発機能において中心的役割を担うとともに、人材育成・国際協力機能においても重要な役割を担うことが期待されています。そのため、情報収集・解析・評価等の公衆衛生学的研究、病原体の分離や構造・機能解析および感染免疫学的解析や病態解析を含む感染症基盤研究、検査診断技術・治療薬・ワクチン等の開発研究、品質管理やバイオセーフティ等の研究を推進していきます。感染症危機発生の際に対応できるよう、平時より先進的研究体制を構築・発展させていくことが求められます。
感染研としては、まずは、信頼性のあるデータ・情報の収集および発信に努め、社会から信頼される研究機関として、国内外の機関と信頼関係に基づく連携体制を構築していきたいと考えています。一方、未知の感染症危機への備えとして、多種多様な感染症発生への対応を可能とする幅広い視点での研究を推進し、多様な分野の人材確保・育成に努めたいと思います。また、先進性の高い研究推進に向け、自由度・柔軟性の高い研究体制構築が求められます。さらには、感染症動向に社会の動きが大きく関与することをふまえ、経済学・行動学等を含む社会学を融合した統合微生物学・統合感染症学の構築を視野に入れています。このように信頼性・多様性・先進性をキーワードとして、一歩一歩課題を克服し邁進していくことにより、将来、JIHS感染研が国内外から信頼され、次世代研究者が集う先進的感染症研究拠点となることを目指しています。
2025年4月1日
国立感染症研究所長 俣野 哲朗