細胞化学部 第三室 研究成果1

細胞化学部 第三室 研究成果1

平成30年2月15日更新

 

 

 

<コレステロール合成に関わるスクアレン合成酵素を標的としたC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス戦略>

 

 

Saito K, Shirasago Y, Suzuki T, Aizaki H, Hanada K, Wakita T, Nishijima M, Fukasawa M.

“Targeting cellular squalene synthase, an enzyme essential for cholesterol biosynthesis, is a potential antiviral strategy against hepatitis C virus.”

J. Virol. 2015; 89(4):2220-32.

doi: 10.1128/JVI.03385-14.  Free PMC Article

 

C型肝炎ウイルス(HCV)は生活環の様々な局面で、宿主細胞のコレステロール代謝を利用しています。コレステロールは複数の酵素反応を経て合成される脂質ですが、我々はその生合成の一過程を担うスクアレン合成酵素(squalene synthase, 図参照)に着目し、HCVに対する抗ウイルス標的となりうるかを検討しました。HCVに感染した培養細胞にスクアレン合成酵素の阻害剤YM-53601を添加したところ、宿主細胞の増殖に影響しない濃度で子孫ウイルスの産生が強く阻害されました。また、YM-53601以外のスクアレン合成酵素阻害剤でも同様の結果が得られました。YM-53601を添加した細胞ではコレステロールの合成が低下していましたが、それに伴ってコレステロールから合成されるコレステリルエステルの合成も低下していました。そこで、Sandoz 58-035という薬剤(図参照)を用いてコレステリルエステルの合成を特異的に阻害したところ、YM-53601とは異なり、HCV産生の阻害は見られませんでした。これら薬剤の効果から考えると、コレステロールの減少がHCVの産生阻害を引き起こしたことが示唆されます。サブゲノミックレプリコンおよびシュードウイルスを用いた検討から、YM-53601は少なくともHCVRNA複製過程および細胞への侵入過程を抑えると考えられました。以上の結果から、HCV産生において宿主細胞のコレステロール生合成経路が重要であることが明らかとなり、スクアレン合成酵素がHCVに対する薬剤標的となる可能性が示されました。本研究は、国立感染症研究所細胞化学部・ウイルス第二部、浜松医科大学との共同研究の成果です。

 

JVI2015-1.png

 

 

  

関連する日本語総説

齊藤恭子, 深澤征義

“宿主細胞コレステロール生合成系を標的としたC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス戦略”

生化学 2016; 88(3):411-5.

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