細胞化学部 第三室 研究成果6

細胞化学部 第三室 研究成果6

2012年1月11日

コーヒー由来化合物であるカフェ酸、タンニン酸によるC型肝炎ウイルス感染阻害とその阻害機構の解析

 

 

・Shirasago Y, Inamori Y, Suzuki T, Tanida I, Suzuki T, Sugiyama K, Wakita T, Hanada K, Fukasawa M.

“Inhibition Mechanisms of Hepatitis C Virus Infection by Caffeic Acid and Tannic Acid.”

Biol. Pharm. Bull. 2019;42(5): 770-777.

 doi: 10.1248/bpb.b18-00970

 

 

疫学的な研究から、コーヒーを1日複数回摂取することで肝がんの発症リスクが低下することが知られています。C型肝炎ウイルス(HCV)感染は我が国において肝がんの主要な原因ですが、HCV感染患者における肝がん発症もコーヒーの摂取回数と逆相関することも報告されています。そこで私たちは、HCV感染に対するコーヒー成分の影響を、培養細胞HCV感染系を用いて検討することにしました。コーヒー抽出物がHCV感染を阻害すること、コーヒー抽出物の主要成分であるカフェ酸がHCV感染を阻害することがわかり、以前に報告しています(Jpn. J. Infect. Dis. 2015)。そして今回、さらに詳細に阻害メカニズムも含め解析を行いました。

様々なコーヒー含有成分をさらに検討した結果、カフェ酸に加えタンニン酸も強い阻害効果があることがわかりました。これら2つの化合物のHCV感染阻害過程を詳細に検討した結果、カフェ酸は侵入過程を強く阻害し、タンニン酸は侵入過程・複製過程・ウイルス粒子形成・分泌過程すべてを有意に阻害していることがわかりました。さらに、カフェ酸は、1)侵入過程の中でも、ウイルス粒子自体に作用すること、2)ウイルス粒子の感染性に必須のアポEタンパク質がウイルス粒子と相互作用することを阻害すること、が明らかになりました。その結果、宿主細胞表面に結合できるウイルス粒子の量が低下し、感染が強く阻害されるというわけです。

HCVに対しては、最近では非常に有効な治療薬が開発されていますが、感染細胞内で複製過程を阻害する薬物ばかりです。カフェ酸やタンニン酸のように阻害過程が異なり、食品由来成分で安価にHCV感染を防げる化合物が見つかれば、非常に有用であると考えられ、さらに検討を続けています。

本研究は、国立感染症研究所細胞化学部・ウイルス第二部、東京理科大学、浜松医科大学、慶應義塾大学との共同研究の成果です。研究費は、文部科学省科研費、日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業等の支援を受けて行われました。本成果は、発表雑誌のHighlighted paper selected by Editor-in-Chiefに選ばれました。

 

 

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