HIV-1/2抗体確認検査試薬欠品について
令和7(2025)年4月15日
国立健康危機管理研究機構
国立感染症研究所エイズ研究センター
HIV-1/2抗体確認検査試薬である「Geenius HIV 1/2 キット」について、製造遅延により、令和7(2025)年4月下旬頃まで、欠品・不足することが現時点では見込まれています1)。
HIVの検査・診断については、下記3)-5)のガイドライン等をご参照ください。また、HIVスクリーニング検査の結果が陽性の場合に行うHIV-1/2抗体確認検査とHIV-1 RNA核酸増幅検査(NAT)のうち、HIV-1/2抗体確認検査については、受託臨床検査機関等における検査受託が一時的に中止されている場合があります。HIV検査を実施されている医療機関におかれましては、検査受託再開後の抗体確認検査提出をご検討ください。
参考:
1)
「Geenius HIV 1/2 キット」欠品のご案内
https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2025/04/285b7bce5a9393d87650f8d380c847fe.pdf
2)
体外診断用医薬品添付文書 Geenius HIV 1/2 キット https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/ivdDetail/ResultDataSetPDF/530492_23000EZX00058000_A_02_01
3)
診療における HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン 2020 版 (日本エイズ学会・日本臨床検査医学会標準推奨法)
https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2020/10/guidelines.pdf
4)
保健所等におけるHIV検査・相談のガイドライン 第5版(令和6年3月版) https://www.hivkensa.com/wp-content/uploads/2024/04/guideline_v5.pdf
5)
病原体検出マニュアル 後天性免疫不全症候群(エイズ)/HIV 感染症 https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/HIV20250221.pdf
用語解説:
HIVスクリーニング検査
HIV(HIV-1とHIV-2)に対する抗体およびHIV-1抗原を高い感度で検出する検査であり、国内ではHIV 抗原抗体同時スクリーニング検査法が広く使用されている。迅速検査のイムノクロマト法(IC法)と検査室検査のCLIA法、CLEIA法、ECLIA法、ELISA法が国内で承認・販売されており、これらはいずれもHIV-1/2 抗体(HIV-1とHIV-2は区別できない)とHIV-1抗原(IC法以外は抗原と抗体の結果を区別できない)を同時に検出でき、第4世代検査とも呼ばれている。その他にPA法によるHIV-1/2抗体検査がスクリーニング検査として国内で承認・販売され用いられている。一般的にIC法と比較して検査室検査(CLIA法、CLEIA法、ECLIA法、ELISA法)の方が感度・特異度が高い。感度が十分に高いため、HIVスクリーニング検査が陰性の場合は、感染初期のウインドウ期を除くと、HIV感染なしと判定できる。大手受託臨床検査機関での検査項目名は「HIV抗原・抗体(CLEIA)」「HIV-1,2抗原・抗体同時測定定量(CLIA)」「HIV抗原・抗体(スクリーニング)(CLIA)」などである。
追加スクリーニング検査
事前確率の低い集団では、初回のHIVスクリーニング検査で陽性となっても、陽性的中率は高くなく、偽陽性が多く含まれている。特に、初回のHIVスクリーニング検査を迅速検査(IC法)で行った場合などでは、HIV-1/2抗体確認検査とHIV-1 RNA核酸増幅検査(NAT)を行う前に、追加で、別の方法のHIVスクリーニング検査が行われる場合がある。追加スクリーニング検査には前項のHIVスクリーニング検査のうち、検査室検査(CLIA法、CLEIA法、ECLIA法、ELISA法)によるHIVスクリーニング検査が使用される。
HIV-1/2抗体確認検査
HIVスクリーニング検査が陽性だった場合に、HIV抗体の確認と、HIV-1抗体とHIV-2抗体の鑑別の目的で行う確認検査。かつて抗体確認検査として使用されていたウエスタンブロット(WB)法の「ラブ ブロット1」「ラブ ブロット2」が2022年6月に発売中止となり、現在はイムノクロマト法(IC法)によるGeenius HIV 1/2キットが国内で唯一承認・販売され使用されている。IC法によるHIV-1のバンド4本(p31,
gp160, p24, gp41に対する抗体を検出)と、HIV-2のバンド2本(gp36, gp140に対する抗体を検出)の結果をもとに判定する。診療における HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン2020 版では、HIVスクリーニング検査が陽性でHIV-1/2抗体確認検査が陽性(HIV陽性、HIV-1陽性, HIV-2陽性のいずれか)の場合はHIV感染ありと判定する。HIVスクリーニング検査陽性で、HIV-1/2抗体確認検査が陰性の場合は、HIV-1 RNA NAT検査結果により判定するとともに、感染リスクがある場合は2週間後に再検査を行う。大手受託臨床検査機関での検査項目名は「HIV-1/2特異抗体(イムノクロマト法)」「HIV-1/2抗体確認検査」などである。
HIV-1/2抗体確認検査でHIV-2陽性と判定された場合は、国内で承認・販売されているHIV-2 RNA NATがないため、国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所又は地方衛生研究所に相談する。
HIV-1 RNA核酸増幅検査(NAT)
国内ではHIV-1
RNA定量用の検査のみが承認・販売され、使用されている。HIV-1 RNA定量用の検査は、診断目的の検査として精度管理されている検査とは異なり、診断目的でのカットオフが明確に定められていないことに注意が必要である。但し、実臨床では治療前後のウイルス量のモニタリングとともに、HIV-1感染診断の補助として広く活用されており、特に、抗体陽転化する前の急性HIV-1感染の診断に有用である。HIVスクリーニング検査陽性の場合は、HIV-1/2抗体確認検査とともにHIV-1 RNA NAT検査を行うことが推奨される。大手受託臨床検査機関での検査項目名は「HIV-1RNA定量」「HIV-1核酸定量(HIV-1RNA定量/リアルタイムPCR法)」「HIV-1 RNA定量(TaqManPCR法)」などである。